蒼龍革命 #2

導入が下手くそすぎるぞ俺

 

 

モンカラマリを後に飛び上がった貨物船は大気圏から抜けた次第星の海に光速で飛び込んだ。ワープゾーンの青いトンネルを抜け、オーキス達を乗せた船はモンカラマリの星がビー玉より小さな青い球に見える程度には離れた宇宙空間に抜け出し、エンジンを停止した。



オーキス「そうだ、ナビコンピュータが計算を終わればハイパードライブを起動してワープに入っていいんだ、後で島の星の座標を教えるぞ。」

 

ブリッジは前方の広大な星の海と左右にスライドして触る必要がある程の船の制御装置が並んでいる。その横ではアテナから預かり、旅立つ前に右手をプラグ状のユニバーサルインターフェースアームに改造してもらい、そこから船とリンクして船の飛ばし方をダウンロードしたインターフェースアームを外し、オーキスの元に寄ると交代するように椅子をスライドして操舵席を譲った。

 

レナ「……何にもない所に来たけど、ここで修行するんですか?」

 

オーキス「修行先を探すのはレナ自身だ。ジェダイの寺院は銀河の至る所にあったが今と昔では状況が違う。」

 

レナ「帝国に占拠されたって事?」

 

ワープを終え、船が静かになると背後の扉からレナが入ってきた。船の操作をちびえぬ子に任せ、オーキスがローブの中からホロクロンを取り出すとその場におき、中のホログラムを展開した。

船内の空間に広大な銀河系の中に青い点の星が浮いている…「宇宙の地図」だ。

 

オーキス「私の時は首都衛星コルサントで修行したんだが……集中して向かうべき場所を探すんだ。フォースが示してくれる。」

 

レナ「向かう場所………」

 

フォースの使い方はいまだに曖昧だ。ホロクロンから記録を呼び出し、自在に操る事は出来るが物体を持ち上げる力は未だに無い。試すのではなく目を閉じて、周囲と宇宙船の装甲を透して感じる宇宙空間のフォースと胸の奥で感じる魂と一体化を図ろうと顔を苦めた




レナ「……。」



オーキス「目を閉じ、フォースを受け入れるんだ。」

 

レナ「……砂嵐と赤い空が見える。これは────」

 

レナの脳裏に見えた荒廃した文明のビジョン。

工場ドロイドが砂で埋もれ忘れ去られた…消されたにも感じる星の光景を僅かに映し出され、ホロクロンがフォースを感じると銀河の地図から端にある一つの星系にズームされた。



レナ「ホロクロンが此処を示している…」

 

オーキス「ジオノーシスじゃないか……」

 

レナ「砂の星なんでしょう?」



オーキス「あそこにジェダイ寺院はない、クローン大戦で分離主義の星だった所だ、それに今は住める場所じゃない」

 

レナ「戦争で環境が壊れたの?」

オーキス「帝国がジオノーシアンを殲滅して、数年前には隕石も落ちたんだ。今では帝国も近寄らない所だ」

 

オーキスがホロクロンを手元に引き寄せ、船のデータバンクを起動させた。コンソールのキーを爪の先で突いてジオノーシスの情報を表示させた。

人工的に作られた人間の兵と人型の機械人形のバトルドロイドとの戦い、大戦が終わり帝国が誕生すると彼らによってジオノーシアンが滅ぼされた事…古い新聞の写真が次々映し出された。



オーキス「…嫌な予感がする」

レナ「でも、フォースは此処を見せてくれた。えぬこちゃん、R-16ポイントに座標をセット。ジャンプして」

 

ラティアス型のロボットが腕を変形させ、船に接続した。覚えたてのハイパードライブの起動プログラムを入力し、座標を入手すると船の各所に存在する姿勢制御スラスターを吹かし、方向を定めると間延びした星の宇宙の景色から青いトンネルへと突入した。






かつての共和国が帝国へと名を変え、武力による圧政に変わるとジオノーシスの文明は真っ先に滅ぼされた。この星には主力として生産されていた戦闘用ドロイド、兵器の工場があるからだ。今となっては機能停止をされたままのドロイドが、荒廃した工場が砂嵐に飲み込み始め、死の星へと成り代わっていた




オーキス「周囲に帝国の船はないな…どの辺りかわかるか?」



レナ「もっと遠く、自然のところにある感じが…」

 

船のシールドがある限り視界を灰色に染める砂はもちろん幾年も一緒に飛ばされたドロイドの部品すら弾くお陰で砂嵐の中も安定して飛行ができる。ちびねぬ子が姿勢制御プログラムを操り、オーキス達が操縦桿を触らずとも飛ばしていられるのはそのお陰だ。

 

外のフォースを感じ取るように目を閉じたレナの言葉を受け、メインエンジンから蒼白の炎を噴かし砂嵐を突破する。砂の壁が青い光に弾かれていく様子は普段見えないシールドが発生してることを確信させてくれた。



オーキス「この辺りは嵐がないみたいだな」

レナ「違う………ここは綺麗すぎる。向かう場所はもっとこう…ちからの集まりみたいなのがあっちのほうから」

 

オーキス「…………こっちか?」

 

太陽の代わりをなす恒星と星の大気の影響で上空は常に夕方のようにオレンジ染められ、晴れている所では周りが砂嵐の壁で覆われるため、箱庭に閉じ込められような気持ちにも感じる。

レナが向かうべき場所を装甲越しで顔を向け、オーキスもレナと同じものを感じ取ろうと瞑想。瞼の裏に一つの光の柱が見えると操縦桿を握りしめた。レナ自身で分かっているのなら導く者になった以上、そこへ連れて行くのは悪いことではない。





フォースを頼りに向かった先は帝国の調査隊も近寄らなくなった隕石の落下痕。大気の熱で溶けた飛来物の塊が砂に半身浸かってる様子から巨大なクレーターがあったことは間違い。

砂嵐の中、操縦席から上を向いても空が見えない程。嵐が当たらない影の場所に船を砂の上に着陸させ、後部の貨物ハッチが開く。見覚えのある巨大なバーナーで焼き切った痕と、この嵐で長年放置され、研磨されて丸みを帯びたが、何かの創作物と思わせるような顔にも見えた



オーキス「…実物を初めて見たが大きいな。ジェダイと隕石になにか関わりが?」

 

レナ「………。」

 

フォースが見せたビジョン以上にレナには見覚えがある気がした。シールドとは別に空気漏れを防ぐ内側のレーザーフェンスを切ると船の外に足を踏み入れた。積もった砂の柔らかい感触と熱風にどこか懐かしい気もした。

エンジンを停止しオーキス、ちびねぬ子と続いて貨物庫から出てくるが、オーキスが足を止めるとラティアスのロボットに戻れと告げた。



オーキス「帝国が来る可能性がある。えぬ子は船で待機してくれ。それと…数日戻らなかったら島に帰るんだ。」

 

オーキスの言葉に不安そうに表情を変えたラティアス。通信機は備えているが、自分の声を伝える機能はないため言いたげに表情のままこちらを見つめて操縦席に戻っていく。



オーキス「どうだ、中に入るものなのか?」

レナ「たぶん。でも入り方がわかんない」

 

オーキス「なら目ではなく、耳を傾けるんだ。これが関係するモノならフォースが伝えている」

 

レナ「傾ける…こう?」

 

耳らしい耳を持ってない代わりに頭の先を岩につけて目を閉じる。身近な存在であったドサイドンと違いその岩は不揃いでざらついていた。

脳裏に未来予知でもいうのか、この後自分がこの岩をドラゴンクローでこじ開ける姿が映し出され、今度は違うやり方で開けようとするビジョンが見えた



レナ「ドラゴンの証拠を見せる…」

 

誰かがそんな事をビジョンで言った。技では意味がないのなら…彼らにしか持ってないものを差し出せば良いのだ、首を曲げ俯くと足の爪を口元に食い込ませ軽く切りつけた。切り口から首元へと細く流れていく鮮血を、血を付けるように岩肌へと朴をつけた。拭き取られるように血が岩へと染み込み、その後も小さな流血が止まるまで吸われ続けた。

 

砂に沈んでいくように岩が揺れ、地震が起きオーキスがその場に尻餅をつく。受け入れるように壁の一部に長方形の線が入ると上開きで開いた。岩肌の内側は黒光りで硬くひんやりとした金属の感覚がした。



レナ「ねぇ、この先に何があるの?

オーキス「無であり、全てでもある。」



レナ「訳わかんない」

オーキス「だろうな、…私のマスターに言われた言葉だ」

 

取り込むように外の空気が流れ込み、オーキスが灯を指しても深淵が広がっている入り口へとレナが踏み込んだ。ゆっくりとシリンダーが動き始め、岩に擬態した扉が迫っていく。その隙間からこちらを覗いていたレナに思わず叫んでしまった。扉だった場所を見つめ続け、あぐらをかいて両手を合わせて握りしめた。

 

オーキス「恐怖を克服するんだ、決して恐るな!」
















自分の姿、かたちさえ忘れてしまうような暗黒の世界。いつのまにか鉄の冷たい感覚も無くなってどこに、どこまで歩いてるのかすら分からなくなった。翼を広げれるほど道幅に余裕があるとわかれば尻尾も垂らして楽な姿勢で前を進み、孤独感と暗闇の恐怖から逃げるように虚空を四股で軽く蹴り飛翔。なにも無い空間を、ただひたすら突っ切るように首も尾も伸ばす体制を取れば真っ赤なマフラーをなびかせ、速度を上げた。



レナ「そう言えば、いつから飛ぶのが好きだったんだろう。」

 

レナ「ドンといて飛べなくても、飛ばなくても良いって思ってたのに。ボーマンダになってからはいつしか空を飛んでいた。」

 

無の世界を飛翔する内、孤独感よりもひたすら飛ぶことだけに夢中になっていた。何も無い世界でも風は感じ取れた。いつしか風景は無数の線。纏うように集まった風と一緒になれば、闇の世界を突き抜け、鮮明に記憶にある青一色の空と海が広がっていた。



レナ(早く飛べば飛ぶほど風を感じて、風を感じれば世界が、未来が見えてしまう程身近に感じた…)

 

レナ(もしかして、この風がフォースだったのかな。)

 

海よりも広く、地上よりも自由な大空は飛べるものにとって楽園に等しい。

一気に降下し、落下で得たスピードで水面間近で半円を描くように垂直に上昇。もう速度をうしない、少しで宇宙に届きそうな薄暗い空へ迫ると、わずかな時間の無重量感を覚えて大の字で背中ダイブした。

 

背中から流されていく明日への風を感じ、真下へと身体を捻りながら急降下の姿勢をとり飛翔。水面上でマフラーが風に当たる音を鳴らしながら空の向こうへと赤い翼を羽ばたかせた。





ポケルディアの海上に作られた人口の土地に建てられたのはポケルディア軍の基地だ。上空からの直接的な進入は本来なら良くて厳重注意、撃ち落とされるのが関の山だがボーマンダは…ドラゴンのタイプを冠するポケモンは彼女以外既に存在しない為、正面からわざわざ入る必要がない。顔パスというものだ。そのまま本拠点の上を通過し、軍に所属する寮が並んだ建物練の一角へと降り立つ。



ドンの部屋は若い頃ガルシアが使っていたオフィスをそのまま借りており、似たような建物が並ぶ地帯では頭二つほど抜きん出ており、一眼でもわかる大きさだ。巨大な両開きの扉の前へとオフィスの窓を横目で覗きながら歩いて回り込んだ





アテナ「レナ上手くやってるかな」

 

ガルシア「厳しいと思うな。」

 

cn「ジェダイになるには遅すぎたし、修行するにも早すぎたんだ、残念だけど…もう会えないかもな。」



ドン「そうか?面倒な手続きもなくなって、子供達に個室を与えられるから嬉しいが」






ドンのオフィスで安心感すら覚える見慣れた人たちの姿が見えた。…しかし、横開きの扉を咥えて僅かに開いた隙間から聞こえたものは信じ難かった。長く付き合う以上、お互いの悪いところはしってるつもりだ、腕にサイホーンを抱いたドンですら陰口は一年を通しても一度あるかどうかの人物だ

 

ガルシア「今となっては貴重なドラゴンだが、繁殖能力もそのオスもいなければな…」

 

ドン「姉貴に対して妙によく接してると思ったら、訳があったんだな

 

リト「ちょっと冷たいわよドンさん。レナさんは…もう1人よ。色々寂しいところもあるはず。私は同情してるわ。」



レナ「…」

 

後ろ姿のリトの最後の言葉には自分というよりは、ドンに同情しているように思えて仕方なかった。笑談の中に入り込むのも、このまま殴り込む気も失せてしまった。咥えたドアノブを放し、その場から立ち去ろうと後退りをしたが、こちら側を向くように座っていた1人がドアの隙間から見えた青い姿に指を刺し、地響きと足音がしてから部屋に連れ込まれた。

 

ドン「おっと、もしかしたらと思ったが。……いつからいたんだ」

 

レナ「…ちょっと前から。」

 

リト「えっと、皆悪気があったわけじゃないのよ。」

 

ドンの大きな図体が見えてからでは逃げるには遅すぎた。尻尾を根元から掴まれ、部屋に引き込むように引っ張りこんだ。

部屋の空気と全員の表情が一気に悪くなった。

しかし、ドンに引き込まれたとき違和感も感じた、ガルシアはともかく、他の人が口を揃えてこんな話のために集まるわけがない。そもそも、レナはいつから帰って来たのだろうか。先程の話の中でCNと思わしきシルエットが口にした言葉に確信した。

 

レナ「いえ、おかしい………これは現実じゃない!リトさんまでがそんな事を言うわけが…そもそも、私はジェダイになるために宇宙に居たのに帰れるわけが」

 

「何言ってるの?実際にポケルディアに居るのはアナタでしょう?」

 

リト「帰ってきたなら、オーキスはこの中に居るわ!……待って、今の誰!」



リトでも、アテナの声でもない女の言葉が響いた。その直後、でっぷりと太ったガルシアの腹部から貫通するように真っ赤な、血のような真っ赤な光の剣が独特な音と共に発生し、最も簡単に切り裂いた。ドサイドンのシルエットがその場に崩れ落ち、次へ、次へと周りのヒトが切り刻まれていく。

 

ドン「あ、なんだアンタは!…ぐあっ!」

 

ドンが振り向いたと同時に砲にもある、自分を引き摺り込んだ腕が吹き飛んだ、その場に部屋を揺らして倒れ、ドンの向こう側で照らされた赤い光は怒りや憎しみを感じた。

オフィスに飾られた、士官学校の卒業リボンとリトとドンが写った額縁が飛び散った鮮血で真っ赤に染められるのを見てしまった。足が、自分の意図せずに逃げようと動いた。飛び屋をぶち破り、助けを呼びに───

 

扉の向こうはゲームのように切り替わったとでも言いたいのか、外ではなく、基地の廊下だった。振り向けば食堂から出てきた事になる



ドン「ウグッ……やめろ…!リトさんには…」




レナの背後からは叫びなのかすらわからない声と、二つの物音。無人になったかのように静まり返ると扉が開き、赤い光が廊下を照らす。

自分も覚悟した、唾を飲み込み、恐怖心を抑えて右爪から「ドラゴンクロー」の赤い磁気を帯びた刃を展開すると相手を待ち構えた。



この騒動の犯人を目の前にしたとき、レナは信じられなかった。血のように真っ赤なマフラーを首に巻き、赤い翼を広げた青いドラゴン……自分とそっくりなボーマンダだ。

ただ、違うのは、左目から首元までに負った傷跡と、そのボーマンダが口に咥えた短いバトンから真っ赤に照らす光の剣「ライトセーバー」が握られていた。



レナ「嘘……こんなの夢よ!その剣は…CNさんの…!」

 

「そうかもしれないわね。でも、これが現実よ」



逃げるドラゴンと追うドラゴン。いつのまにか道はなくなり、ショックで展開した「ドラゴンクロー」も消えていた。冷たい眼差で顔色ひとつ変えず、首を右から左へと振るいライトセーバーでレナの首を切った。赤い斬撃の光がゆっくりと伸びていく。

ライトセーバーを咥えたドラゴンが遠ざかるように…否、レナが果てのない暗闇への底へと落ちていく感じがした。