ジョウのドラゴン事ジョウ

8月~10月までの出来事まとめ

 

ドラゴン。

 

誰よりも印象強く、誰よりも気高くて、誰よりも強い種族。

 

ドン「…そろそろいくぞ!」



『犀竜一体』!

 

前は沢山居たんだけど、大きな戦いで皆居なくなっちゃった。だからポケルディアにはドラゴンの記録はあってもドラゴンは居ない。

でもドラゴンは力として生きているんだ。

 

ロン「竜には竜だ!………変身!」

 

竜王無尽!』

 

だから憧れたんだ。僕も……ドラゴンと共に強くなりたいって!





ポケルディア防衛軍本部、多目的ドーム



ベンチ席に囲まれ、フェンスの向こうでは軍所属の者がいつものようにバトルを繰り広げている。お昼終わり、1番でバトル場を使っているのはドンとそしてその対戦相手はガルシアだ。

電磁のバリアで擬似的に再現した「守る」を張り巡らせたフェンスのお陰で1位2位を争う馬鹿力の持ち主のバトルがいつ岩石砲の流れ弾が来るかと程よい緊張感で見学することができる。

 

今日の対戦はドサイドン2人ではなくドラゴン2人だ。激しく巻き起こる青い炎と、巻き起こる風が炎を引き寄せ風で打ち消しあっていく。

 

ガルシア「あの風はいつもの見た目だけだ、このターンで決めるぞ!」

 

ロン「んなモン!必殺の…!」




『竜の「恩返し」!』

 

ドラゴンクローの刃があまりにも強大すぎて、爪としてではなく手首までを真っ青な炎で燃やし剣へと変わり果てた青い炎を燃やした黒いリザードンと、身に纏った無数の線を吹き飛ばし、このドーム毎真っ二つに割れそうな勢いで片手の爪が輝き、天井まで突き刺さった赤い翼の青いドラゴン。バリアフェンスが激しく火花を散らしながら「恩返し」の白銀の剣と「ドラゴンクロー」の蒼い剣がぶつかり合った!



『バーストバトル!!!』



ドン「いけえぇぇぇぇっ!」

ガルシア「おおおぉぉぉっ!」

 

両者のドラゴンがぶつかり合った時、側にいたドサイドン共が叫んだ。お互い腕に巻いたメガベルトは螺旋模様が入ったメガストーンが虹色に光り輝いていた。お互いの心の強さ、力がダイレクトに伝わるメガシンカ同時のぶつかり合いは気合の勝負だ。天井から背後のフェンスへと切りつけた跡を残しながら振り下ろしていくボーマンダの力の源は間違いなくドンだ、心の底から勝つという熱い気持ちが直接レナの中にも伝わり、それを原動力として全力を超えた極限の一撃をぶつける。しかし、それに応えれる程今のレナには力不足だ。一方的に増していく秘めた内なる力に耐えきれなくなり、技が光の粒子となって弾け飛び崩壊した。

踏ん張った足と尻尾以外は後ろに90度傾いてまで耐え切ったロンとガルシアが一撃の剣を払い捨て、技虚空を振ったレナの真下へと突っ込んだロンが、土手っ腹へと蹴りを入れ蒼い足跡をつけた。地面に落ち、ロンの背後では炎の足跡が爆発し、レナが煙から目を回して落ちてきた

 

ガルシア&ロン『バーストブレイクッ!!!』

 

レナ「しまった…!あグっ………!」




ロン「──ライダーキック。きまっっったぁ…!」



ドン「惜しかったんだけどなぁ。…押忍!ありがとうございました!」

 

落ちていくレナに腕に嵌めたモンスターボールから光線を放ち、赤い光に包まれてボーマンダが吸い込まれた。手にしたボールを見つめ、元のリザードンに戻ったロンは上機嫌でボールを受け取り、ドンの背中を叩いてフィールドを後にした。その後は待ってましたとばかりにドサイドン同時、フィールドの内側に足を踏み入れた



ガルシア「……さて、これで終わるのには早すぎるな。」

ドン「へへ、そーこなくっちゃな」






リト「相変わらず凄いわねぇ。」

アリィ「アリィも大きくなったらメガシンカできるのかな」

 

ベンチ席ではガタイが大きい人達に紛れた、軍人とはとてもかけ離れた女性的な雰囲気を醸し出す大きなリザードンと、幼いヒトカゲが席の間にバスケットを広げ、バトルを見学しながらお昼をとっていた。下手な映画より迫力があり、なにより戦っているのは夫であるドン。こちらを向いたドンにリトが軽く手を振った。その隣では明らかにサイズ違いな大きなのサイホーンが目を輝かせ、席から…正確には前の座席に前足を引っ掛けて立っていたサイホーンが階段へと降りるとアリィとリトが同時に後ろに振り向いた



リト「どこ行くのジョウ、これからドンさんのバトルよ?」

 

ジョウ「ちょっとロンさんのところ!」

 

ドームの観客席への階段を降り、基地へと続く廊下の奥に、リザードンの後ろ姿があった。この時だけは突進するジョウを避けるヒト達をわき目も降らず夢中で走り、角を曲がった所でロンがこっちに気がついた

 

ロン「んだぁ、ガキの方じゃねーか。ダルマどもの試合は」

 

ジョウ「いつも見てるから今日は良いよ。それよりドラゴンカッコよかった!!」



ロンがいうダルマとはドンとガルシアの事だ。膨れた見た目から連想してそう呼ぶ…だそうだ。

ジョウの嘘偽りない素直な感想に、気絶したレナを収めたボールを手元で転がしながら口元がにやけて有頂天だ。



ロン「んなモン、とーぜんにきまってるだろーが。お前も俺のかっこよさにわかってきたな!」

 

ジョウ「うん!普段は変なの(煙草)咥えてるけど、ドラゴンになったときはヒーローみたいで!」

 

ロン「ひとこと余計だ」



足元のクソガキに煙草でも押し付けてやろうかと思ったが、後でリトに間違いなくハンマーでぶん殴られるのはわかりきってた。頭の先に伸びたツノに軽く叩いてやると、ポケモンセンターとしても機能している医務室に入っていった。





ドン達のバトルはどちらかが1連勝しない限り何度も続く。時々ヒートアップして特撮物のように外にまで移動して殴り合いを始めるから見届ける方も大変だ。この日は日が沈むまで続き、ドンのz技で放たれた岩石砲を受けたガルシアが、背後のフェンスに叩きつけられ、重さでへし折れるまで続いた。この2人が被害を気にせず戦えるような場所はポケルディアには存在しない。バリアフェンスの交換と薬代だけでドンが経験値を得られたのなら、それはガルシアにとって、軍にとって安い代償だ。

 

腹巻きのように包帯を巻き、身体中に絆創膏と軟膏を塗ったドンが帰ってきて、家としてあてがわれたオフィスでは一家団欒の時間が来た。



ジョウ「アリィー、またあれ取ってー」

アリィ「わかった。」

 

リトがドンに貼られた湿布を交換してる中、ジョウの頭にアリィが登り、本棚の2段目から一冊の本に手を伸ばした。ヒトカゲの尻尾から燃える小さな焔には背中が熱かったが、そんな事はすぐに忘れてしまった。

アリィが両手で引っ張り、ジョウから飛び降りて本を咥えさせた。歯形のついた、何度も何度も見た数部門もあるポケモン図鑑の一つ。

こちらの世界にはポケモンに番号は振られていない。厳密には人間がいなくなったらため、その意味を為さなくなった、というのが正しいだろう。

代わりに18種類のタイプ別として分かれて描かれている。ジョウが取った本はドラゴンの図鑑だ。



読み切れていない程、読んでもすぐ忘れてしまい毎日飽きもせず最初のページから鼻を押し付けてページを捲る様は、買ったばかりの少年誌に夢中になる様そのものだった。

 

ドラゴンのタイプを冠するポケモンは多種多様だ、翼のあるヒトが創造容易いドラゴンから水中での正則に適した者から鉱物、果実にも似たドラゴンがいたのがジョウには疑問と興味が湧いてきて仕方ない、果てには宇宙という空より高い場所に干渉し隕石を降らせる技や、海が枯れる日照りや大地を飲み干す大雨すらも鎮めることができたポケモンが古代にいた事にもだ。

 

夢中になる事は悪い事ではない、ジョウの場合…勉強と言うものは右から左に流れていくものなので、一つの事に熱心に知ろうとする姿勢はドンもリトも評価していた。下手に覚えてしまったせいでのちの事態がおきるまでは






時は過ぎて8月31日。

この日はジョウの誕生日だ、パーティーも島のカフェでゆっくり行う…つもりだったのだが、孫の初めてのという事でガルシアが事を大きくして、気付けば食堂ひとつ…いや基地全体を会場に総動員でパーティーなんて計画したもんだから後に引けなくなり、島の外のヒト達はよぶに呼べなかった。



この日は夕方から待機中の小隊以外は酒を飲み、このために用意していた予算を注ぎ込んで各地方、国から料理人を呼んでのフルコースだ。

出席したメンバーもドンと同じ部隊メンバーやバトルで知り合った仲、ガルシアの個人的な関係の将校から企業のお偉いさん…ジョウの知らない場所で、知らないヒト達が次々と集まっては挨拶をしてくれた。



ガルシア「こちら、投資家の〜…」

 

ドン「ジョウ、教導隊隊長の…」

 

ジョウ「あ、ありがとうございます…」




ガルシアの肩に乗っていたエンニュートに頷き、ドンと並ぶようなユキノオーが来た時は乗って椅子から転げ落ちてしまった。ついでのように挨拶をしに来て、すぐに元の輪の中に戻っていくから正直名前なんて覚えてない。隣に置かれたプレゼントより、疲れの方が勝り、首にしめてもらった赤い蝶ネクタイをリトに外してもらうと白いクロスが引かれたテーブルの下から抜けるように基地の方に向かった。

 

ジョウ「アリィー、お部屋戻ろー」



アリィも、この日ばかりはジョウの事は忘れていた、いや正確には覚えているのだが初めての同い年か、少し上の子たちとジョウとでは出来ないお人形やアクセサリ遊び、絵本の話しているとつい忘れてしまうのだ。その横顔は普段出ないような笑顔で、ジョウはちょっと嫉妬心を覚えた。



ジョウ「いーもんいーもん!今日は誕生日だから!」

 

ドン「アリィは女の子なんだ、一瞬に遊べる友達が出来るのは嬉しいだろうさ」

リト「そう怒らないで?まだ私達からのプレゼントがあるんだから」

 

ジョウ「…ほんとに?」

 

ドン「嘘ついてどーする」

 

拗ねたジョウのほおにクリームがついていたのを2人が笑うとリトが頷き、その場から離れた。

その隙を見計らっていたようにガルシアが勝手に集まっていた取り巻きどもを連れてジョウの元に来た。



ガルシア「さージョウ!その前に爺ちゃんからのプレゼントだ!!!!!なんでも、欲しいものを言ってごらん?それが俺からの誕生日プレゼントだ」

 

ドン「待て、それ本当だったのか!?」

 

ガルシア「俺を誰だと思っている!ポケルディア防衛軍総司令官、9代目のガルシアだぞ!なぁに、無人島の一つや二つ用意してあげようじゃないか!」

 

ジョウ「んー……あ、今何でもって言ったよね?」

 

ガルシア「お、さっそくあるか???」

 

この時ガルシアは「所詮」子供のお願いと程度に思っていたと後に語る。その子供のお願いに散々苦しめるとは知らずに…



ジョウ「じゃあドラゴン!レナのおねいさんやロンさんみたいな強いドラゴンのポケモンと仲良くなりたい!」

 

ガルシア「ドラ……ゴン……………?」

ドンoO(だーからいわんこっちゃない)

 

ジョウ「うん!僕も一緒に強くなる!」



ドラゴンが欲しい、この一言がガルシアを、その周りにいたヒトを、会場にいた人を次々と黙らせていった。お祭り騒ぎの次はその場に居た者で相談会だ、前の戦いでドラゴンはいなくなった。居ないからこそ、この場でジョウにドラゴンのポケモンをプレゼント出来たなら、これ以上にない出世コース…いや、絶滅扱いの世論をひっくり返す事になるからだ。調査隊、探検隊が今もなし得ない功績は計り知れない。

 

だからこそ、目の前で固まったガルシア達には不思議に思ったのだ。

 

ガルシア「ポケモンか…もっとこう、おもちゃとかじゃないのか?」

ジョウ「ううん、それよりもドラゴンが良い!…じーちゃんならできるよね?」



ドン「ジョウ、そんな大変な事言うもんじゃないぞ。良いか、あいつらはなもうな…」

 

ジョウ「だって、なんでもって言ったじゃん!お偉い人なんでしょ!?」



その言葉が、ガルシアを本気に駆り立てた。

野次馬の視線を浴びたガルシアがプロテクターの一枚に仕込んだ通信機を口元に当て、非常事態宣言を発した。



ガルシア「…教導隊各員は非戦闘装備にて待機!  将官共も持ち場に戻った!」

 

ドン「マジかよ大将!?」

ガルシア「ポケルディアの司令官に嘘はない!ましては孫の為だ、少尉も規定の位置にて待機!これより、ドラゴン狩りを開始する!」

リト「また予算の無駄って言われますよ!」

ガルシア「自分の懐から出せば問題ない!しばらく孫は任せたぞ。」



パーティの最中、非常サイレンが鳴り響く。パーティーには参加していたが、お酒を控えていた待機中のメンバーと、ドンを含めた次期将官候補生、ガルシア直属の部隊がゲスト達に別れを告げ格納庫に駆け寄った。



リト「・・・」

 

席の裏に隠していたピカハンで止める手もあったが、あくまで今日は誕生日パーティー、沢山の人前でこんなものは振れるわけもなく、嵐のように去っていくガルシア達を見るだけで何も出来なかった。

 

リト「ジ、ジョウ……アテナさんの所に行って、呼んできてもらえるかしら?ついでに何か買ってあげて…」

ジョウ「わかったよ!」



その後はジョウが島へと赴き、夏祭り最後の日を島で楽しんでいたアテナを呼ぶも、その頃にはガルシア含めた師団は既にいなかった。



かつて、戦争があった。始めは水面下で行われていた小規模な小競り合いだ。

お互いの主張がぶつかり、交渉で解決出来ないとなると武力を用いるのは人間の時代から代わっては…食物連鎖の頂点が人間からポケモンに成り代わり、彼らのようになっただけが正しいのかもしれない。

 

今の「人類」から頂点として君臨し、竜だけが統治する世界を作る者と、それを嫌い、これまで通り優劣もなく、一つの生き物として溶け込み、共存の道を選ぶ者の戦い。

 

この戦いは物語のように悪いドラゴンをやっつけて、それでハッピーエンドというお話になるのだが、実際は遠い昔、自分達の祖先の祖先が生きていたような時代に起きていた人間とポケモンの戦争の尾が続いてただけだ。未だ使命をもった人が生み出した兵器が、世界の結果を受け止める事なく勝手に殺し合いの延長戦をしていたにすぎない。選ばれたのが最も力を持つドラゴンタイプなだけで、これが他の者なら、それこそガルシアやドン達が争う事になっていのは間違いないだろう。

しかしドラゴンはもう居ない。あの戦いで数こそ減らしたものの、一定の種は生存していたのだ。それなのに終戦後、全国に散らばっていたドラゴンが一斉に姿を消した。世界から消えたのだ。

救助隊を始めとした独立した組織が各地を巡り、また、ボーマンダであるレナと親しかったドンが彼女から聞いていた集落などを調べてももぬけの殻。世界から排除されたように姿を消していた。

 

それから数年が流れ、レナと再開するも、それ以降の情報が掴めず今に至る。古代から伝わる伝説のポケモンのように彼らもまたその一つとして歴史に刻まれつつあった。






ジョウのわがままでドラゴン探しが始まって一か月が経った。もちろんそれで見つかるならこの数年で絶滅と言われるわけないだろう。調査隊と自軍の部隊からの報告書の束を捲り終えると、大きな息を吐いて、腕を組んだ。

 

ガルシア「まずいな……他所から譲りうけるのもうまくいかないとなると…」

ドン「だから言ったじゃねーか甘やかすのも程々って」

 

ロン「人間の世界じゃロケット団ってのがポケモンの取引してるって聞いたぜ。」

ガルシア「論外だ、人間に生きる権利を侵害される組織には頼らん。」

 

ドン「ジョウにそんな奴のを渡す通りはこっちもねーよ。しかし…化石復元ってのもダメなんだろ?もう土下座でもすべきじゃねーかこれ」

 

ガルシア「・・・」

 

古い地層からは確かにポケモンの化石が眠っている。勿論旧人類のもだ。

骨から復元するという発想が無かったため、こちらの世界では復元技術は非常に遅れている。大きな一杯の紅茶を啜り、話の展開の無さにあきれて、煙混ざりのため息が出た

 

ロン「これはもう土下座しかないよなぁ……」

ドン「覚悟するんだな。」





その日の夕方にはリトがジョウとアリィを連れ帰ってきた。

初めての孫の誕生日に何もできなかったのは悔いになるが、このままではまともに顔を合わせる事もできない。覚悟を決めたのだろうか、一般のヒトは立ち入りが禁じられている指令室へと呼び寄せた。



ジョウ「もしかして、本当に連れてきてくれたの!?」

 

ガルシア「その事だがな…」

 

期待のまなざしが今も輝いていて、心境的には辛い。信じて待っていた子に期待を裏切るからだ。もし今セレビィに出会えるのならばあの日に戻り、調子に乗った自分の首を締め上げたいと思う程。その時に限って島ではセレビィに出会えない。国会で集中的な審議を投げられる時より心臓が締め付けられた気分だ。だからこそ、話に割り込むようにドンが口を開いたのには代わりに弁解でもしてくれるのかと期待してしまった。



ドン「その前に、俺とリトから言いたいことがあるんだ。まだ俺達からのプレゼント、貰ってないだろ?」

ドン「今、渡そうと思って持ってきてるんだ。」

ジョウ「…えっ、なにそれ?」

 

ジョウが楽しみに足元で跳ねている。何もかも大きな世界のガルシアの指令室ではよく見えない。ソファの上に飛び乗り、テーブルに置かれた箱をドンが開けて見せてくれた。 

紅白で塗り分けられたモンスターボール。本来はポケモンを捕まえる、入れておくための道具だが、こちらでは相手に側に居てもらうための一つの、いわば婚約指輪に近い物だ。新品同様に復元したものなら20万はくだらない。高級品の一つだ

 

ドン「ジョウも知っているだろう?モンスターボールだ。俺の空の奴あげるだけなんだけどな;」

ジョウ「これ…良いの!?物凄く高いって聞いたよ…」

ドン「そいつでお前がドラゴンに出会うんだ。やっぱり何処にも居ないんだわあいつら」

 

ガルシア「・・・やはり、今は生存してないないようなんだ。今も捜索は続いてるが…」

ジョウ「だって任せろって言ったじゃん!」

ドン「そいつがどんな奴かもわからないのに、それでいいのか?」

 

どんな奴でも、その言葉にはジョウも俯いた。いう事も聞かないヒトなら、バトルが嫌いな子だったら…ドンに抱かれて、テーブルに乗ると、置かれたボールが転がった。



ドン「それに相棒ってのはな、誰かから貰うもんじゃないんだ。出会うもんだ。」

ジョウ「自分で見つけるってこと?」



ドン「いいや、自然と見つかるんだ。色んな事が起きて、いずれお前と、その誰かが出会う。そうやって俺も姉貴と出会ったし、ロンだってそうだ。」

ジョウ「それじゃあ見つけられなかったのと同じだよ!」

 

ドン「そうだ、俺達では見つけられないんだ。だからジョウ、お前が出会うんだ。そのボールに相応しい奴を」

ジョウ「なんか、良い感じに誤魔化してない…?」

 

ガルシア「・・・さーせんっした」

 

机に手を着き、机越しに頭を下げたガルシア。ジョウの膨れた頬を抑えるようにドンの手が左右から摘まんだ



ドン「まぁそう怒るなって、その代わりにだ、お前に相棒ができたら俺とバトルしよう。そして俺に勝てたら…もっと凄いものをくれてやる。誰も持ってない、リトさんにもあげてないとっておきだ。」

ジョウ「・・・ほんとぉ?」

ドン「流石に嘘はつかねぇよ」

それから何度聞いてもドンが言っていたとっておきは教えてくれなかった。ガルシアに対しては不満はあったが、自分で勝って、初めて得られる権利とまだ見ないポケモンに想像を膨らましているうちに二日後には忘れてしまったようだ。



それから遠くない未来、本当にジョウは相棒を見つけるだろう。サイホーンとしてヒトしても越えるべきが壁はもう目前まで迫っていた。